ニュアンス ノ イエ -パーソナル ファニチャ リノベーション-
クライアント要望
クライアントは感受性が豊かで、シンプルで綺麗すぎない、自分達らしい落着きのある空間を希望されました。高級ホテルのような生活感 のないデザインではなく、経年美や職人の手仕事の痕跡、素材の背景にあるつくり手のバックストーリも大切にされていました。さらにはカットサンプルやCGと、実際にできあがる空間の差も極力埋めたい。と要望されました。
その他のポイントとしては最大公約数的平準化というキーワードも頂きました。限定的な空間のつかい方ではなく、気分や機能・ 用途、さらには年をとって生活が変わった場合にも、色々なつかいかたができるフレキシブルな空間を希望されました。
設計コンセプト
クライアントの要望を受けて、イメージや意図、経年美や素材のバックストーリーなど、可視化できないものをいかに深く共有し、それらを積み重ねることによって空間をつくる。ということを考えました。その結果、”ニュアンス”を共有する。というコンセプトとなり、“ニュアンスノイエ“というタイトルとしました。
素材に関しては経年美や手仕事による痕跡が残る、無垢材+植物油塗装や珪藻土等をつかい、素材の後 ろにストーリやつくりて・売り手の思いがのあるものをつかうこととしました。そうすることで同じ素材でも表層的に可視化されたものを超えて、より心地よく愛着のある空間となります。
最大公約数的平準化の要望に関しては、クライアントに最適化したオリジナルのデザインでありながら、拡張性や汎用性 のあるオリジナル家具パーソナルファニチャ(以下:PF)を作成することとしました。PFはハードウェア(固定部分:構造体、以下:HD)とソフトウェア(可変部分: 非構造体、以下:SW)から構成されます。
リビングと和室を一体化した24畳のLDK空間の壁面に、規格化されたサイズの家具構造体フレームのHDを設置します。それらの中に場所やつかいかたを考慮して、家具機能をもつSWをインストール(設置)していきます。同じ規格に合わせたSWは場所や高さが交換可能ですし、新しいSWを後からつくってインストールすることもできます。
設計プロセス
クライアントの感受性や素材感、ストーリを大切にするために、ヒアリング後に使用する素材候補リストを作成しました。選択した素材は同じ樹種のフローリングでも、生産者の顔がみえていたり、開発者の意図やコンセプトがわかるものなどを選んで提案しました。
素材リストの中からクライアントが気に入った素材は、CGやカットサンプルで確認したうえで、ショウルームで実際に大きさに近い空間を体験することを繰り返して、クライアントがイメージするニュアンスを共有していきました。これらのプロセスから選んだ素材を最終的には現場にならべて、CGも併せながら確認することで、できあがりの空間をイメージして頂き、素材と空間の雰囲気を決定していきました。
入居後のクライアント感想
細かなイメージの共有を重ねることでうまれた空間は、クライアントのニュアンスが反映された空間となり、竣工当初からとても気にって頂けました。今後、住まわれるなかでさらに経年美や愛着なども加わり、よりクライアント好みの空間になっていくのではないかと思います。なお、ノベーションにてご夫婦それぞれのワークスペースを設けたのですが、その後コロナ禍となり、在宅ワークをとても快適におくれている。とのご連絡も頂きました。
□計画概要
所在地:東京都渋谷区 用途:集合住宅 家族構成:夫婦 構造:RC造